• 被害状況の調査
  • 被害の地図作り
  • 全体の作業状況の地図落とし込み
• 活動内容の決定
  • ニーズの把握と内容の決定
  • 活動期間の決定
  • 個別ニーズと現場活動
  • 住民への活動の広報
  • 作業場所や内容の割り振り
• ボランティア受付
  • チームの編成
  • 健康チェックカードに記入
  • ボランティア保険の登録確認
  • 統一した認識票、腕章、ゼッケンの交付
  • オリエンテーションの実施
    • 活動内容の概説
    • 作業基準の説明
    • 安全管理の徹底
  • 作業時の服装などのチェック
• 外部への広報
• 資器材の調達
  
• 作業基準の決定
  
  • 労働時間の管理
    
  • 水分補給の管理
    
  • 住民の仕事とボランティアの仕事の区分原則
    
  • トイレ、特に女子トイレの確保、事前点検
    
  • 休憩場所の確保
    
  • ボランティアの甘えの排除
    
  • 作業終了時のチェック
    
• 現場活動の後方支援
  
  • 現場の巡回
    
  • 事故時の対応
    

• 携帯電話など、本部との連絡手段の確保
  
• 住民との作業内容の調整
  
• 安全管理の徹底
  

個々人の仕事

• 安全管理の徹底
  
• 個人で用意する物の準備
  

目次へ戻る

はじめに・水害時に住民が行う復旧作業は次のようなことが想定されます

　排水・土砂の除去・ガレキの撤去・倒木の除去・家屋の清掃・通路の確保・家具の搬出・たたみの清掃・家屋内部清掃・土嚢の撤去・ドロ塗れの家財道具の搬出・ドロ塗れのたたみの撤去・ゴミの分別処理・ゴミ類の集積場への搬送・生活家具類の整理整頓・その他
　行政の分担は、道路の復旧、公的な場所の復旧のほか、一般的には清掃後の各家庭の消毒（消毒剤の配布の場合も）、ゴミ収集となります。家屋の中で生活に必要な場所に入り込んだ土砂などの除去も災害救助法の枠組みで実施するのは可能ですが、生活に最低必要な部分の応急的な処置にとどまるので家屋の敷地内は自力が基本と考えたほうがいいと思います。

　家族や親類、隣り近所の助け合いで作業が可能な人も多いと思いますが、独居の高齢者など高齢者世帯など、助けが必要なケースもあるでしょう。その際に、隣近所以外の地元ボランティアや外部からの救援ボランティアらが作業を手伝うことが求められます。
　通常の清掃作業のように思われますが、被災地を覆ったドロは、汚物も含んで不潔で、作業には衛生の徹底が必要です。また、水を含んだ畳の運び出しなどは屈強な若者にも重労働です。作業によるボランティア自身の”二次災害”を引き起こさないために、参考にしていただければ幸いです。また、ボランティアは活動をし過ぎないことも大切です。被災された方が、再び自分の力で立ち上がれるようにサポートをし、あとは地域のコミュニティーがその地域なりのやり方で動かれることを尊重すべきでしょう。
　１９９８年８月に栃木、福島、茨城の各地方で起きた水害でのボランティア作業の実践のために、主にボランティア作業の場面を前提に作成しました。不十分な面があると思いますので、皆さんのご指摘をお願いします。随時改訂することにします。内容や健康チェックカードは、利用者の責任に置いて自由にご利用ください。
　このマニュアルでのボランティア本部は、市町村単位の現地本部を想定し、本部スタッフは別にして、日帰りでの活動を想定しています。また、ボランティアや被災住民への炊き出しなどの作業は、別途、食中毒防止などの徹底が必要で、今回は触れていません。日帰りできないほど交通が回復していない場合には、現地入り自体が復旧の妨げになりますし、広域だという場合は全体の構想が異なると思います。どちらかといえばボランティアをする個人より、ボランティア組織や団体などを想定して書きましたが、ボランティアをされる方も本部でこのような準備や体制があってこそ現場で活動がスムーズに行くことをご理解ください。

目次へ戻る

• 被害状況の調査
  
  • 被害の地図作り
    地元の災対本部との連携で情報を入手し、地図を本部に掲示する。
    
  • 全体の作業状況の地図落とし込み
    地図の上に透明のビニール（テーブルクロス用など）をはり、そこに作業状況を油性マジックで記入し、ベンジンで消していく。地図は、被災規模に応じた縮尺（現場では25000分の１以下、10000分の１が望ましい）とし、各チームの現在作業をピンなどで図上に示し、本部で分かるようにしておく。
    活動地域周辺の病院や診療所、救護所も明示しておく。 被災、作業状況の把握で、清掃作業の終了のめどを早期に見通し、ボランティア活動の終了、本部の撤去時期も早期に内外に公表する。
    
• 活動内容の決定
  
  • ニーズの把握と内容の決定
    
    冒頭に記載してあるようなさまざまな活動内容のうち、今回のボランティア活動としてどこまでやるのかを決める。被害状況の把握の際に大まかなニーズも調査し、市町村の災害対策本部と調整で、住民がやること、ボランティアが手伝うこと、行政がすることを明確にする。これは、その時点では行われていない対策が、行政によって準備されていることが少なくなく、自治体への情報提供がきっかけで、行政の責任による対策が行われることがあるからである。水害時は、地元行政や社会的なインフラが阪神大震災のように大規模に機能喪失することは考えにくく、ボランティアがいるから仕事を無理に作り出すようなことは避ける。
    
  • 活動期間の決定
    
    当初の想定した活動を行うために必要な活動期間を想定する。臨時のボランティア本部を設置しての対応が必要な期間は長期間には及ばないし、被災地の負担を考えつつできるだけ短期を目標とすべきである。活動準備の段階から、行政だけでなく地元の日常活動を行っている団体・組織と連携し、臨時本部の活動期間終了後のフォロー体制を検討しておく。
    
  • 個別ニーズと現場活動
    
    当初に決めた活動内容を拡大する際には、活動現場で勝手な判断をしないよう徹底しておく。そのために、現場との情報連絡手段と連絡責任者を確保する。また、現場での裁量の範囲を事前に現場リーダーに伝えておければ望ましい。活動内容の変更は、ボランティアならではの臨機応変が求められる一方で、関係機関との調整が不可欠になる。安全上、非専門ボランティアの範囲を越える場合は当然対象外となるが、対応が可能な個別事情による活動範囲の拡大であっても、その事情が広範にある場合は慎重に対応する。いくらボランティアと言っても「あっちのボランティアさんはやってくれた」と言われて、対応能力以上の活動を迫られかねないからである。
    
  • 住民への活動の広報
    
    活動内容と期間を決定後、できるだけ速やかに活動内容や受付の場所を記したビラなどで住民に知らせる。やることは「これだけ」と明記するほうが望ましい。より救援が必要な人を優先することや、自力で可能な人より老夫婦・独居老人・障害者家庭などを優先すること、危険物、発火物などがある場合には、処理を専門業者に委託した後の作業となること、下記の活動基準に沿って行うことなども明記しておく。
    
  • 作業場所や内容の割り振り
    
    ニーズに基づいて、前日のうちに翌日の作業方針を決めておく。活動に参加する人数の増減に応じて、対応できるように余裕を持っておく。
    
    

    目次へ戻る

• ボランティア受付
  
  • チームの編成
    
    チームリーダーを決める。集団活動のリーダー経験者がいるかどうかなどを目安とする。客観的な視野を持っていることが望ましい。リーダーの仕事を説明し、了解してもらうこと。
    事前の募集段階で、５，６人がチームとなることを広報しておき、そのまま作業に移行できるような形が望ましい。
    １チームはハードな肉体労働に耐えうる人５，６人に、サポートも含めた作業従事者が少なくとも２，３人が望ましい。家財道具の拭き掃除、家具の再配置など、住民と一緒に作業をする。作業基準の遵守のチェック役なども委ねる。
    
  • 健康チェックカードに記入
    
    ボランティアを把握する場所は受付以外にない。ここで、添付の健康チェックカードに記入することで、ボランティア自身の健康・安全管理意識を高めてもらうことも重要である。以下の項目に該当する人は、肉体労働作業には不向きな人なので、軽作業に回ってもらう。このため、受付や本部でのバックヤードの仕事など、軽作業を用意しておければいい。医師、看護婦、保健婦が本部に常駐することが望ましい。地元の医師会や日赤などとの連携を図る。
    １）７０歳以上はお断りする（自分の家の片づけに立ち会うときに無理にボランティアが排除することはしない）
    ２）６５〜７０歳は軽作業に回ってもらう（同上）
    ３）最低血圧が９０以下で、かつ最高血圧が１４０以下の範囲内はＯＫ。それ以上は血圧が高いので、肉体労働作業に従事していいかどうか医師、看護婦、保健婦に相談の上、再度受付をしてもらう。
    ４）心臓病やケガ、その他病気がある人は、作業に従事していいかどうか医師に相談の上、再度受付をしてもらう。医師の指示については作業リーダーに伝えたうえで、基本的には自己管理する。
    
  • ボランティア保険の登録確認
    
    社協や日赤で、原則個人負担によるボランティア保険を平常から受け付けている。ボランティアの受付で登録の確認や、保険加入ができることが望ましい。
    
  • 統一した認識票、腕章、ゼッケンの交付
    
    その本部で登録したボランティアであることを明示するものが必要。名札などに血液型も記入する。万が一の事故対策の面もあるが、ボランティア自身の安全意識の高揚に役立つ。
    
  • オリエンテーションの実施
    
    • 活動内容の概説
      
    • 作業基準の説明
      
    • 安全管理の徹底
      
      無理な作業をしない、がんばりすぎないこと。滑りやすいため、転倒や転落に注意する。事故の防止を作業効率より優先。不潔な環境のため、ケガをした場合は破傷風などに感染する危険があるので医師による治療は必須となる。事故などがあれば、直ちに救護所や診療所、病院などに搬送する。
      
    • 作業時の服装などのチェック
      
      ケガ防止のため、暑くても長袖、長ズボンの厳守。よごれるので、レインコートがいい。ヘルメット姿が望ましい。手袋は、少なくとも軍手、耐油性のゴム手袋があれば望ましい。靴は、運動靴→長靴（そこに鉄板が入ったもの、滑り止めのもの）や長めの地下足袋→安全靴の右に行くほど望ましい。
      
• 外部への広報
  
  ホームページの開設や、地元マスメディアへの広報、広域連携組織への情報提供などを通じて、ボランティア本部が設置され、ボランティアの受け入れや作業依頼の受け入れを開始したことを広報する。終了時期についても、早期に明示する。ホームページでの情報提供は、情報の垂れ流しにならないよう、正確さと鮮度を確保する。情報担当者は、本部の中枢スタッフとなる。いいかげんな情報は流さず、情報ソースも明確にしておく。
  
  

  目次へ戻る

• 資器材の調達
  
  家屋敷地内の作業でも、ユンボやベルトコンベア、チェーンソーなどの重機が必要になることがある。地元の建設事業者などに、操作者と一緒に支援・連携を求められれば望ましい。トラックは大型より２ｔ以下のもの、軽四駆トラックは小回りが利いて使いやすい。一輪車は必携。ボランティアは使用したことのない工具は事故防止のために使わない。提供資材は、作業終了後の後始末も考えて、要返却、処分可能などを明確にしておく。車両類は、その場で使いっぱなしのリースができれば望ましい。
  スコップ、竹ぼうき、ゴムホース、たわし、バケツ、バール、タオル・ウェスなどは消耗資材となる。一般からの少量物資より、民間企業などからまとまった支援が受けられれることが、作業上も望ましい。
  
• 作業基準の決定
  
  不潔な環境でのハードな作業であり、作業基準の遵守は重要である。また重労働であり、このようなケースの作業で突然死として考えられることは、１）心臓発作のリスクの高い人間が作業中に発作、２）ケガ、３）脱水、４）食中毒の危険がある。ケガをした場合は、破傷風の恐れがある。また、以下の基準で作業を行うことを、作業申し込みを受けた段階で作業依頼をした住民に十分説明しておくことがトラブル防止となる。
  
  • 労働時間の管理
    
    原則１時間で休憩１５分。日中は、疲労度に応じてさらに休憩をする。昼食時間は１時間取る。一日の作業時間は、昼食や休憩時間を含めて６時間以内を目安とする。
    
  • 水分補給の管理
    
    熱射病や脱水症状の予防のため、休憩時に十分水分電解質（スポーツドリンクが望ましい）が補給できるようにする。ボランティア自身に持参してもらうと共に、本部でも企業などの協賛を受けることが望まれる。
    
  • 住民の仕事とボランティアの仕事の区分原則
    
    他人の住家に侵入して行う作業であることの意識を徹底する。大型家具や家電製品などの搬出の際には、所有者の識別ができるようにする。外部から盗難などがないよう、住民やボランティア以外の出入りにも気を付ける。
    住民作業の補助的役割がボランティアであり、必ず住民も参加して行う。高齢者などの場合は、本人か関係者の立ち会いで作業する。住民の許可の元で、作業前写真と作業後写真を取ることも有効である。予定作業以外の作業を頼まれた場合は、原則として本部と連絡を取り合ってから対応し、現場で安請け合いは厳に慎むこと。
    
  • トイレ、特に女子トイレの確保、事前点検
    
    作業の申し込み段階で、住民側にトイレの使用が可能か、近所で貸してもらえるかなどの確認をしておき、作業班に徹底する。
    
  • 休憩場所の確保
    
    作業スケジュールに沿って、休憩時間を過ごす場所を確保する。休憩時に、清潔に手洗いをしてから飲料を飲むことを徹底する。昼食時間時には、食中毒や感染症の予防のために、清潔に手洗いができて食事が出来る場所を設定しておく。昼食や飲料は、ボランティア自身が事前に確保し、休憩時までは清潔に保管しておくことを徹底する。
    
  • ボランティアの甘えの排除
    
    被災地内のうわさ話などをおしゃべりしたりしない。ボランティアだからと言って勝手なことはしない。無資格で重機などを使わない。
    
  • 作業終了時のチェック
    
    作業終了時に、依頼住民に家屋内外を確認をしてもらい、終了書類にサインをもらう。
    
    

    目次へ戻る

• 現場活動の後方支援
  
  • 現場の巡回
    
    作業基準を守っているかどうかをチェックして回る。飲料が現場に不足していれば補給する。
    
  • 事故時の対応
    
    現場のチームからは、事故時には必ず連絡することを徹底する。現場から医療機関に搬送できなかったり、１１９番ができない場合に、情報を転送する。事前に、ボランティアが作業していることを地元消防などに通報しておき、万が一の際の出動を要請しておくこと。
    各班のリーダーには、事故時には現場で甘く判断せず、近所の医師に相談するか、１１９番をして救急搬送を依頼させる。作業にはいる前に、各班ごとに作業現場近くの医療機関を確認し、あらかじめ本部から連絡をしておく。地元保健所とも、大枠で事前すりあわせしておくことが望ましい。休日でも診療してくれる医療機関を確認しておく。
    
  • 作業後の入浴など
    
    不潔な環境での作業後、公衆浴場などで入浴して着替えられるよう、公衆浴場などの場所を確認しておき、各リーダーに周知しておくとともに、地図にも表示しておく。
    
    
    

    目次へ戻る

• 携帯電話など、本部との連絡手段の確保
  
  緊急時など、ボランティア本部と連絡できる通信手段を確保しておく。
  
• 住民との作業内容の調整
  
  • 作業開始前に、住民と依頼内容の再確認
    
    作業中に、事前調整していない依頼があった場合に、本部と連絡を取って対処する。基本的には、無理をしない。
    
• 安全管理の徹底
  
  事故が起きた際に、直ちに医療機関に搬送するなど、安全管理がリーダーの仕事であることを十分、認識する。事故時に、相談、搬送する医療機関などを確認しておく。作業の進行が遅くても休憩時間、昼食時間を厳守し、チームのメンバーがぐったりしていないかなどを目配りする。
  
  

個々人の仕事

• 安全管理の徹底
  
  作業前日は睡眠をよく取り、風呂に入ってぐっすり寝る。無理をしない。
  
• 個人で用意する物（本部で用意されている物があるかもしれません。事前に確認してください）
  
  長袖、長ズボン、レインコート、軍手、長靴（安全靴がベスト）、替えの靴、タオル、洗面用具、替えの下着、靴下、シャツ、ズボン、飲料、昼食、保険証（少なくともコピー）、携帯電話、笑顔！。
  

健康チェックカード

目次へ戻る

中川和之＠時事通信　／　災害救援を考えるホームページ
98年８月水害　災害救援研究所臨時情報の履歴